ウォッチドッグスに見る表面化する人間性について

「ウォッチ」という単語に縁があるらしい

つい先日、UBIが「ウォッチドッグス」を無料配布した。シカゴの歩きスマホおじさんゲー」としてこのゲームは有名であり、いろんな機器をハッキングすることで、街に蔓延る犯罪を阻止したり、逆にひと騒ぎ起こしたりして遊ぶことが出来る。昨今ではIoT機器のセキュリティについての関心も高まっているが、本ゲームにおいては監視カメラや街頭ディスプレイ、信号機などあらゆる機器のセキュリティがガバガバであるという前提でまあまあやりたい放題となっている。

そもそもオープンワールド系ゲームの進め方にある種の≪人間性≫が出るのは当然で、最近ではゼルダの伝説 BotWのフィールド配置が計算づくされたものであることが語られるなど、ある程度開発段階でそれらを考慮して開発されているようだが、本件では探索等のクセの話ではなく、このウォッチドッグスというタイトルだからこそ見え隠れする人間性について語るつもりである。

犯罪に手を染めるということ

早速だが、現在の私のステータスを見ていただくことにする。

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このゲームでは街に蔓延る犯罪を阻止/解決することで"評判"を得ることが出来る。評判が上がれば上がるほど、いろいろやらかしても市民に通報されたりしにくく、ニュース等で報道されにくくなるようである。逆に、市民を殺害してしまったりすると下がる。現状、最大値に限りなく近いプラスの評判を得ているように思うが、その割には誤操作でうっかり銃器を構えてしまっても容赦なく通報されたりするので所詮はお守り程度の数値でしかないのだろう。

レベルが16であるということはまだかなり序盤なのだろうと思っているが、重要なのは評判があまりにもプラスに傾き過ぎているという点である。このゲームではおつまみ感覚で人を車で轢いたりして犯罪に手を染め評判を下げたりすることになるが、筆者はゲーム内においても何らかの遵法精神が染みついてしまっているのではないだろうか。コンプライアンスコンプライアンス

また、左下に「ハッキングした銀行口座*1」という表記がある。どうやらこのゲームは通行人をハッキングするとその人の銀行口座からお金を盗めるというとんでもない世界のようで、さらにハッキングしても基本バレないので盗める人からは基本盗み得という始末。しかし、この通行人をハッキングして銀行口座からお金を盗むという行為自体にも心の中でブレーキがかかってしまうのだ。

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このように、ハッキングすることが出来る場合は「銀行預金口座」が表示されるのだが、よりにもよって「抗不安薬を処方された」人の口座から金を盗むなんてたとえゲームであっても出来ないでしょ!と良心に苛まれる。ハッキングすることが可能な通行人には「養親」「肝硬変に苦しんでいる」みたいな逆に口座に金を振り込みたい人も居たりするが、やたらイチャついてる奴や、「悪魔を崇拝している」みたいな人は「ちょっとくらい…バレへんやろ」とちょろまかしたりすることもある。つまりこのゲームをプレイしながら、筆者はある種のボーダーを超えた通行人については何らかの正当化プロセスを持って口座をハックするのだ。

現実とゲームのはざま

もちろんゲームの中なので、小心者ロールプレイを行う義務も無ければ、逆に大罪人として悪逆の限りを尽くし、ヘリまで動員されて追い掛け回されなくてはならないというものでもない。筆者がこのゲームを特に面白いと感じたのはここまで人間性における発達心理が色濃く表面化するゲームは今までプレイしてきたものにはなかったという点にある。シナリオの途中でセキュリティのコントロールセンターを支配する必要があるが、別にこのセンターにいる人達を殺害してもクリアできるし評判も下がらないのに頑なに無殺プレイをしようとしたり(結局ダメだったから殲滅した)、街中をぶらついていると「潜在的な犯罪の手がかり」などを見つけることで犯罪を事前に阻止できるのが妙に楽しくてそればっかりやってメインシナリオを放置したりと、ただ犯罪を犯したりするゲームというわけではなく、「この世界ではこんなルールを守ってこうやって生きていきたい」をゲームの中で実現出来るという体験がそこにはあった。

そもそも街中の人の知られたくないような情報をスマホを使って収集してしまう時点でいろいろと問題ではあるのだが、これについても「犯罪を阻止するためには仕方ない」「重要な情報が得られるならば…」とCIAみたいなことを考えだしたりしてしまう。現実世界においてはそんなもんアカンやろで一蹴してしまうようなことも、たとえゲームの中とはいえいざその情報を手にすることが出来る立場となったときにこんな考え方をするようになる、というのも自身のことながら非常に興味深い。

また、このゲームでは犯罪を阻止することもできるが、「犯行現場に向かうため車両窃盗」「信号機をハッキングして交通事故を起こす」「なんかヤベーやつを暗殺」など犯罪を阻止するために犯罪に手を染めたり、「頼まれたから車両を盗んで警察とガチのカーチェイス」みたいに普通に滅茶苦茶やることもある。何らかの折り合いを自分の中につけつつ、街の中に溶け込むことに筆者はある種のカタルシスを覚えつつ、このゲームを楽しんでいる。残念ながら無料配布期間は終了してしまったが、もしこのゲームが何かのきっかけで手に入るようであれば、是非プレイしてみてほしい。

幻想ノ宴は?

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*1:この値はATMからお金を下ろすことでリセットされる。